乳児のアトピー性皮膚炎は洗いすぎが原因?について大雑把な解説をしてみた
2017/01/06
今回はこれについて書いてみようかと。つい最近話題になったニュースです。
乳児のアトピー性皮膚炎の原因をめぐる新たな所見を受け、一部の科学者は調査に乗り出している。親による乳児の皮膚の手入れ方法がこの皮膚炎の引き金となる可能性が示唆されたためだ。
最新の複数の調査結果によると、アトピー性皮膚炎を引き起こす可能性があるのは、乳児の入浴頻度、せっけんやシャンプーの含有成分、入浴後に適切に皮膚を保湿しているかなどの要因だ。研究者は乳児の入浴は週に2~3回で十分で、多くの場合は洗いすぎかもしれないと指摘する。アトピー性皮膚炎になると、皮膚が乾燥し、かゆみを伴う炎症を引き起こす。
科学者が確信を強めているのは、入浴や汚染物質、室内暖房などの環境要因が、皮膚内の水分を保持しアレルギー誘発物質や細菌を排除するといった皮膚本来の能力を妨害する可能性がある点だ。これにより皮膚の最外層のバリアが弱まり、外部からの刺激物質が皮膚に浸透することで免疫系反応を引き起こす。一部のアトピー性皮膚炎患者については遺伝子変異が皮膚のバリア機能を損なう可能性があることも判明した。
アトピー性皮膚炎は長い間、アレルギー反応で起こると考えられていた。おそらく子供が食べたものや接触したものが、皮膚の炎症につながったという考えだ。ただ専門家は何十年もの間アレルギーをアトピー性皮膚炎の主犯と据えていた研究からは、ほとんど効果的な予防戦略を打ち出せなかった。
オレゴン健康科学大学の皮膚科教授、エリック・シンプソン氏は「アトピー性皮膚炎の原因について理解が深まるにつれ、乳児の皮膚のケアの仕方にカギがあるとの見方が強くなっている」と語る。「私たちが良かれと思って赤ちゃんにしていることがアトピー性皮膚炎を引き起こしているのではないだろうか」と問う。
このアトピー性皮膚炎は通常、乳児の顔や頭部に、小児の場合は肘の内側やひざの裏にも現れる。処方薬の軟こうはかゆみや赤みを緩和するが、治癒はしない。
アトピー性皮膚炎は通常、乳児の肌がまだ発達段階にある1歳半を迎える前に発症する。数カ月、あるいは数年にわたり症状が出たり治まったりを繰り返し、たいてい青年期頃には消失するが、成人になっても続くケースもある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141106-00007891-wsj-intより引用
記事をまとめると今の乳児は清潔にしすぎでそれがもしかしてアトピーを増やしているんじゃないのか?
入浴を週2~3回ぐらいにするのが「適切なスキンケア」になりそちらのほうがアトピー発生リスクを減らせるかもしれないなぁといった内容です。
引用の記事(上の文章)の内容はあくまで推測であり今から書く記事の内容も当然ながら推測になります。
ヤフーのコメント見ると色んな意見が合って面白いです。アトピー多因子性疾患だという事が分かります
これについてアトピー患者である僕の意見をずらずらーっと書き立てていきます。エビデンスも糞もないし赤ちゃんのアトピーに関してはあまり詳しくないので間違っているかもしれない。
それでもよければ是非是非読んでいってください。
結論から言っちゃうとうーんこれ中々鋭いところついてるなぁというのが僕の意見です。
目次
アトピーは皮膚バリア障害から発生する病気である
http://www.atopinavi.com/navicontent/list?c1=chishiki&c2=1&c3=2より引用
アトピーがどう発症するかというと今現在は皮膚バリアが崩壊したところからアレルゲンが入りそれにアレルギー反応を起こしアトピーが発祥するというのが主流です。上の図のような感じ。
この皮膚のバリアが崩壊しやすい体質というのが「アトピー素因」を持つ人。すなわち家族にアレルギーの病気を持つ人ということになります、
皮膚バリアが崩壊しやすい=生まれつき皮膚が弱いことと考えてもらえればOK。
アトピー素因を持つ人は皮膚が生まれつき弱い傾向にあります。その理由の一つとして普通の人と比べて自前で保湿成分を出しにくいということがわかってきているからです。
じゃあ生まれつき皮膚が弱い人は保湿剤塗って皮膚バリアをきっちりと保護してあげたらアトピーになる確率が減るんじゃないの?
というのがちょっと前にあった赤ちゃんに保湿剤を塗るとアトピーの発症リスクが3割減って奴です。
赤ちゃんに保湿剤を塗るとアトピーが減るのはなんで?ニュース見ても分からん人向けに解説してみた!
「洗いすぎによるアトピー増加のリスク」を説明する前に皮膚のバリア機能がどうなっているのかとか赤ちゃんの皮膚の構造を簡単に説明していきます。そうしないとわけわかんなくなっちゃうからね。
皮膚のバリア機能を担っているのはシンプルに言うと3つ
油と水分そしてセラミドです。この3つが皮膚にたっぷりと存在するとき皮膚は潤いのある皮膚となります。
皮膚の油を出す役目は皮脂膜が担っています。これが汗と混ざることにより皮膚の上に薄い弱酸性の膜を張り皮膚の上に存在する菌のバランスを整えます。
皮膚の水分は主にNMFが担っています。NMFというのは天然保湿因子。すなわち皮膚の水分にあたる部分です。
水分と油だけ皮膚にあってもそのまま放置していると蒸発してしまうのでセラミドという成分がレンガのように連なってがっちりと水分をつなぎとめています。
アトピーの人や乾燥肌の人は大抵このどれか3つが皮膚に足りておらず乾燥肌いわゆるガサガサな肌になっています。
だからそれを外部から皮膚に与える保湿剤を塗るとぐっと改善するわけです。
赤ちゃんの皮膚は未成熟
http://www.unicharm.co.jp/moony/hadacare/index.htmlより引用
いまさっき皮膚のバリア機能を担っているのは主に皮脂膜とNMFとセラミドと書きました。すげぇざっくりなのでそこのところの突っ込みは勘弁してね。
んでその皮脂膜とセラミドが存在するのは表皮なんだけど赤ちゃんの場合は大人と比べて未発達で薄い。大人と比べて皮脂の量(皮脂膜)が3分の1~4分の1といわれている。
一方でセラミドは大人より赤ちゃんのほうが多いといわれている。赤ちゃんのころがピークってわけ。
じゃあ油分だけ補充すればいいのかというとそういう単純な話じゃなくてアトピー素因を持つ赤ちゃんは遺伝的に油とセラミド両方少ないと言われている。
さて簡単な説明を終えたところでいよいよ本題に入ります。
お風呂は皮脂膜やセラミドを流出させる
セラミドというのは水になじみやすい親水基という性質を持っています。つまり水に溶けやすいって事です。熱いお湯やプールに長期間入っていたときに指や足がふやけたという経験がある人は多いかと思います。
あれはセラミドが皮膚から水に溶け出していっている証拠です。その状態でお風呂やプールからあがると入る前よりずっと乾燥します。
皮膚が弱い赤ちゃんの場合お風呂に入るという行為そのものがセラミドやNMFを流出させ乾燥肌の原因を招くことになりかねない。
病院で清潔にしてねという指導から一日に何回も入浴をしている場合はそれだけ皮膚への負担になっています。
皮膚が未発達な赤ちゃんならなおさらのこと。でもNMFやセラミドの流出は入浴単体だけではそれほど流出しないかなぁと僕は考えています。
問題は入浴とセットで使われる石鹸とシャンプー。こっちの影響のほうが大きいんじゃないかと。
石鹸やシャンプーは皮膚バリアをぶっ壊す
石鹸やシャンプーは皮膚バリアをぶっ壊すというのは世間一般ではあまり知られていないと思います。
ぶっ壊すはちょっと言い方が過剰ですが石鹸は洗浄力が強すぎるというのが問題になっています。いまだになんで病院では石鹸を使うように指導されているのか正直僕にはわからん。
洗浄力の問題
http://www.kao.co.jp/pro/hospital/pdf/01/01_05.pdfより引用
これは界面活性剤で皮膚を洗浄したときの影響の比較表です。SOAP=石鹸。H2O=水洗い。SDS=ラウリル硫酸ナトリウムです。
NMF=天然保湿因子です。すなわち皮膚で言うところの水分にあたります。細胞間脂質は皮膚の水分を保持する役割。セラミドと同じようなもんだと考えてもらえればいいです。
見てもらえれば分かりますが石鹸はNMFの流出量がぶっちぎりです。2位のSDSは大人が使う市販シャンプーの9割に入っている界面活性剤です。残念ながら赤ちゃん用のシャンプーにもしばしば入ってます
毎日石鹸やシャンプーで洗えばそれだけNMFが流出することになります。つまり過剰に洗えばそれだけ皮膚バリアの破壊が進みます。
皮膚バリアの破壊が進む=乾燥肌になるということはそれだけアレルゲンが進入しやすくなるのでアトピーの発症リスクが高まります。
といっても石鹸やシャンプーをきちんと選べば皮脂や汚れだけを落としNMFの流出を少なくする(皮膚バリアへの負担)といったことは可能だと思います。
ただしそういう類の石鹸やシャンプーを選ぶ事ができるのは石鹸やシャンプーに詳しい人だけであり医者もそこらへんについては疎いので石やシャンプーをきちんと選ぶというのは殆ど出来ていないんじゃないかなぁと思う。
あほな医者はとりあえず無添加使っとけば大丈夫だろという理由で大半が無添加のシャンプーや石鹸を進めてきますが無添加=皮膚の弱い人向けという認識は大抵間違っていることをここに付け加えておきます。
他にも石鹸はアルカリ性で皮膚の弱い人への弱酸性の肌には刺激が強すぎる事。
これは推測ですが赤ちゃんの皮脂ただでさえ大人と比べて少ないのでそれを石鹸でごっそりっとってしまうのはやりすぎではないのかなぁといったこともあります。
以上を踏まえてどうするべきか
じゃーどうすればええねんって話ですが赤ちゃんは生後2~3ヶ月ぐらいまでは皮脂分泌が非常に盛んです。その時期は石鹸で皮脂を取ってあげる。
その時期を過ぎると皮脂分泌量がぐっと減ってしまうので石鹸の使用はほどほどに週2~3回にしてあげるというのがいいんじゃないかなぁ。
記事では入浴は2~3回ぐらいがいいんじゃないかと考えていますが赤ちゃんは汗っかきなので入浴は毎日するほうがいいかなと思います。
一方で石鹸を使わないということは皮膚についた様々なものを落とせないのでそれが刺激になって皮膚のバリアを破壊するとの意見もあるのでどっちがいいとかはない。
しかし洗いすぎで乾燥肌や肌荒れを起こすいうのは確かに存在する。主婦湿疹がその最たるであれは水洗いと洗剤に含まれる界面活性剤で手の皮膚のバリアがぶっ壊されることで起こる。
手は表皮が分厚く中々皮膚バリアが壊れないようになっているのだが洗剤に含まれる界面活性剤はそれらを簡単に壊してしまう。
デリケートな赤ちゃんの皮膚ならより簡単に皮膚のバリアの破壊が進むんじゃないか?というのが僕の考えです。
アトピーの発症リスクの増加は入浴+石鹸&シャンプー(界面活性剤)での「洗いすぎによる皮膚バリア破壊によって乾燥肌になる」も一つの原因としてあると考えればあながち間違いでもないんじゃないかなぁ。
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Comment
うちの子も「3割」だったと思います。
生後1ヵ月くらいから肌が荒れ始めたけど、ワセリンなどで保湿してれば防げたんじゃないかと思うし、2才頃からまた荒れ始めたのは大人用のボディーソープを使ったことがきっかけでした。洗浄力が強くて皮脂を必要以上に洗い流してしまった。
つまり、やさしく洗って、きちんと保湿していれば、ぷるぷるとしたきれいな肌を保てたのにと思うと、親としての責任を感じます。
責任転嫁するわけではありませんが、産院や自治体でも、アトピー予防に関する指導をもっと積極的にしてほしいですね。ちゃんと知識があれば予防できる人、重度化を防げる人はいっぱいいると思います。
日本のスキンケアは綺麗にするというより衛生過多というような感じがします。皮膚を綺麗にするのは大事なんですけど石けんでこすりすぎれば皮膚を余計に乾燥させてしまいますからね・・・。
ちなみにワセリンは保湿成分が入っていないのでアトピー予防にはあまり効果がないと思われます。皮膚のバリア機能を控除させるので若干の予防効果ならありますが。
ワセリンは保湿成分がはいっていないので予防目的なら保湿成分の入った保湿剤が必要になってきますね。
私が出産した産院は、赤ちゃんのお風呂の時にミューズの体用?の石鹸で洗っていました。正直えっ!?それで洗うの!って思いました。自分がアトピーなので、できるなら自分で用意したもので洗いたかったですが、そうもいかず… 。親が気にかけて対策するのは勿論ですが、やはり産院自ら説明するなり対策してくれなければと思います。国レベルで考えて対策してほしい限りです。
今アメリカでは乳児で石鹸の使い方でアトピーの発症率が変わるかもしれないということで大規模調査が行なわれているのでそれで何かしらの成果が出れば変わるかもしれないですね。