プロトピックの副作用について発がん性やら紫外線やらについてまとめてみた
2015/02/26
プロトピックの副作用の発がん性について。今日は書いてきます。プロトピックの使い方とかはこっち。
アトピーで処方されるプロトピックってどういう薬なの?効果や副作用やステロイドとの違いをまとめてみた
今のところプロトピックの発がん性のリスク上昇については因果関係が認められないということになってます。
発売から15年でがんの副作用については様々な追跡調査が行われていてアメリカでは特にさかんに行なわれているようです。
日本では皮膚科が2004年から10年間、小児科では2008年から10年間の追跡調査やってます。
比較的新しい薬なんでどんどん新しいことが分かるでしょうが今分かっているプロトピックの副作用についてまとめてみました。
紫外線について
アルビノ無毛マウスに40週間にわたりUVA及びUVBを照射し、その後12週間無処置期間を設けて観察すると試験動物のすべてに皮膚腫瘍が発生するが、この試験系において紫外線照射と並行して本剤を塗布すると皮膚腫瘍の発生時期が早まることが示されている。
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2699709M2024_2_12/より引用
UVA及びUVBは紫外線と考えてもらえればOK。この結果からわかることはマウスに紫外線をあてているときにプロトピックを塗ると皮膚がん発生のリスクが高まる。
だからヒトが使う場合でも紫外線に当たりつつプロトピックを使うとがんになる可能性があがるかもしれないので使うときは注意するようにというような感じです。
あくまで可能性の話です。動物実験でガンになる可能性があがる=ヒトがガンになる可能性があがるって事じゃないですからね。
動物実験で薬の副作用によりなんらかの異常が起こった場合はそれについて注意書きするようになってます。
紫外線に当たり続けると免疫が抑制され発がん性のリスクがあがる(といっても微量な程度ですが)その中で更に免疫抑制剤であるプロトピックを塗ればそらガンになるのは早くなって当然かなぁというのが僕の考えです。
マウスの寿命って2~3年ぐらいですからこれって相当な負荷ですからね。ヒト換算だと20~30年ぐらい紫外線あてられっぱなしっていう誰もやらないような感じになります。
実際にプロトピックを使う場合は強い紫外線に当たる人は注意するのよー。ってなぐらいで普通に使えば問題ないんじゃないかと。
強い紫外線というのは夏の炎天下で長時間働く大工のあんちゃんやら紫外線の影響が強くなる登山や肌を露出して紫外線に当たる量が増えるプールや海ぐらいなものじゃないかと思います。
どーしても気になる人はそういうときだけプロトピックを使わないのはありだと思う。
塗る量が厳格に決められている理由
マウス塗布がん原性試験は、軟膏基剤および 0.03%、0.1%プロトピック軟膏を体表の
40%相当部位に 2 年間ほぼマウスの一生涯毎日塗布し、発生する腫瘍を無処置群(Sham
群)と比較することでがん原性の有無を調べたものです。その結果、プロトピック軟膏塗
布群で皮膚腫瘍の増加は認められませんでしたが、0.1%軟膏群にはリンパ腫発現頻度の増
加が認められました。血中タクロリムス濃度は各群で投与期間中ほぼ一定の推移を示しま
したが、リンパ腫発現頻度が増加した 0.1%軟膏群での Cmax は 27~50g/ml(平均 35ng/ml)、
AUC は 275~646ng・hr/ml(平均 484ng・hr/ml)でした。すなわち、本試験の結果は、
マウスの場合、このような高い血中タクロリムス濃度がほぼ一生涯続いた場合にリンパ腫
発現頻度が増加することを示唆しております。http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/f040116ujisawakaitou.pdfより引用
マウス実験の結果高い血中濃度の持続が続くとリンパ腫になるリスクがあがるということがわかった。という事。
血中濃度=薬の主成分が体内に残っている量と考えれば分かりやすいかも。
だから薬を塗る際に血中濃度を高めるリスクのある行為は禁忌になっている。
傷口に塗るのは禁止、一回の外用で5g以上使うのは禁止(一回使ったら12時間以上時間を空ける)小児は血中濃度が上がらないように体重年齢によって適切な量を使う、腎障害の患者には使わない、密封法を行なわない等。
まぁ僕は医者からこんな説明を受けたことはありませんが。
んでマウス実験で高い血中濃度の持続というのはどれぐらいかというと上に書いてある35ng/mlということ。でも動物実験のガンの結果ってあんまりあまりあてにならない。
マウスと人はガンの発症リスクが全然違う。マウスは自然発症率は2~62%(性別で違うけどかなり高い)。ヒトの場合は10万人で4~6人とされていて実に1000倍近い差がある。
だからプロトピックを塗る際に35ng/mlというマウスを基準にして高い血中濃度にならなければいいんだなぁというのは何の参考にもならない。
じゃあ何を基準にすればいいかというとタクロリムス(プロトピックの元になった内服薬)の患者の血中濃度を基準に考えればいいかなぁと。
元々タクロリムスというのは臓器移植で拒否反応を示す患者に作られた薬でこれアトピーに使えるんじゃね?って事で作られたのがプロトピックなわけ。
タクロリムスを内服したときの血中濃度が10ng/mlならこの状態が1~2週間程度続いても全身性の重篤な副作用がかなり起こりにくいとされている。
リンパ腫も含む。そこを基準に考えればいいんじゃないだろうか。
プロトピック0.1%(成人用)の血中濃度
- 1. 単回塗布1)
- 成人アトピー性皮膚炎患者各3例に本剤をそれぞれ1.25g、5g、10g単回塗布し、72時間後までに経時的に血中濃度を測定したところ、いずれも塗布後6時間までに最高血中濃度に達し、その平均値はそれぞれ0.4、1.0及び7.5ng/mLであった。
2. 反復塗布1)
N.D.:定量限界(0.50ng/mL)以下
(注)本剤の承認された用法・用量は、1回5gまでで1日1~2回塗布である。
- 成人アトピー性皮膚炎患者5例に本剤1回5gを1日2回、7日間反復塗布したところ、2日後に中止した1例を除き、血中濃度は塗布開始3日後の0.93~4.4ng/mLを最高に、その後は低下した。また、成人アトピー性皮膚炎患者3例に本剤1回10gを1日2回、7日間反復塗布したところ、1例で塗布開始翌日に20ng/mLの血中濃度を検出したが、以後漸減し、塗布開始7日後には3.9ng/mLとなった。他の2例ではいずれも塗布開始3日後の0.97~4.7ng/mLを最高に、その後は低下した。
- 3. 長期使用時2)
- 成人アトピー性皮膚炎患者569例に本剤を1回最大10g、1日1~2回塗布し52週後まで血中濃度を測定したところ以下のとおりであった。(「薬物動態の表」表1参照)
測定時期 | 測定例数 | 血中濃度(ng/mL):平均値±S.D. | 血中濃度(ng/mL):最小値~最大値 |
3日後 | 131 | 1.85±2.62 | N.D.~14.0 |
1週後 | 501 | 0.72±1.13 | N.D.~7.4 |
2週後 | 496 | 0.56±0.93 | N.D.~7.1 |
26週後 | 337 | 0.30±0.93 | N.D.~12.0 |
52週後 | 70 | 0.38±0.87 | N.D.~5.4 |
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2699709M2024_2_12/より引用
当たり前だけど動物実験だけじゃなくてきちんとヒトの試験もやってるから発がん性のリスクがあがる成分が含まれているにもかかわらず販売されているんですよね。
長期使用して週が過ぎるごとに血中濃度が下がっているのは炎症が改善されプロトピックが皮膚に吸収されなくなっているからです。
これはプロトピックが正常な皮膚に吸収されないという大きな特徴を持っていることを反映したデータでもあります。
つまり塗り始めは皮膚の炎症が大きいので薬が吸収されやすい=血中濃度が高くなる可能性があるということなのでガンのリスク増加を考えるならステロイドを使って炎症を抑えてからプロトピックを使ったほうがいいはずです。
そうでなくても酷い炎症のときにプロトピック使ったらほてりやかゆみや刺激感でやばいことになるので僕はステロイド塗ってからプロトピックという使い方をするのがいいと思います。
プロトピック0.03%(小児用)の血中濃度
- 小児アトピー性皮膚炎患者39例を塗布面積により3群に分け、0.1%軟膏を1日2回、14日間反復塗布したところ、塗布後の全身移行性は低く、全測定試料中92%で血中濃度は1ng/mL以下であり、17%は定量限界(0.025ng/mL)以下であった。またタクロリムスの全身移行性は塗布面積とともに増加する傾向にあったが、薬物動態パラメータの経時的な比較から蓄積はないと考えられた1)。(外国人データ)(「薬物動態の表」表1参照)
-
表1 反復塗布a)時の薬物動態パラメータ
塗布面積
範囲(cm2)例数 測定日
(日)塗布量
(g)Cmax
(ng/mL)C0b)
(ng/mL)AUC0-24h
(ng・h/mL)≦1500 16 1 2.3±1.2 0.44±0.76 ― 5.17±8.82 ≦1500 16 4 ― ― 0.29±0.28 ― ≦1500 16 14 2.1±1.0 0.20±0.19 0.16±0.16 3.34±2.50 >1500
≦300014 1 3.8±1.3 0.99±1.37 ― 17.48±25.74 >1500
≦300014 4 ― ― 0.96±0.90 ― >1500
≦300014 14 3.7±1.1 0.83±1.34 0.67±1.12 15.44±28.80 >3000
≦50009 1 4.8±1.1 1.03±1.13 ― 11.03±11.88 >3000
≦50009 4 ― ― 0.96±1.58 ― >3000
≦50009 14 4.2±1.0 0.98±1.03 0.32±0.30 11.35±8.66 (平均値±S.D.)
a)初日及び14日目は1日1回、2日目から13日目までは1日2回塗布
b)塗布前血中濃度
(注)小児で承認された製剤は、0.03%軟膏である。 - 小児アトピー性皮膚炎患者104例に0.03%軟膏を1回最大5g、1日1~2回塗布し52週後まで血中濃度を測定したところ以下のとおりであった2)。(「薬物動態の表」表2参照)
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2699709M2024_2_12/より引用
測定時期 | 測定例数 | 血中濃度(ng/mL):平均値±S.D. | 血中濃度(ng/mL):最小値~最大値 |
4日目 | 52 | 0.07±0.26 | N.D.~1.50 |
1週後 | 104 | 0.04±0.17 | N.D.~1.39 |
2週後 | 101 | 0.03±0.13 | N.D.~0.93 |
12週後 | 98 | 0.01±0.06 | N.D.~0.59 |
28週後 | 96 | 0.02±0.12 | N.D.~0.86 |
52週後 | 97 | 0.01±0.05 | N.D.~0.54 |
N.D.:定量限界(0.50ng/mL)未満
論文
7) 安全性に関する文献
Harperらは中等症から重症の小児AD患者39名を対象に、0.1%タクロリムスを2週間投与し血中のタクロリムス濃度の測定を行った。92%の検体でタクロリムス濃度は1 ng/ml以下と低く、17%の検体で検出限界以下であった。血中濃度は皮疹面積が増えると上昇する傾向がみられた。血中半減期は66時間であった57)。Rubinsらは中等症から重症の成人AD患者32名を対象に、0.1%タクロリムスを2週間投与し血中のタクロリムス濃度の測定を行った。96%の検体でタクロリムス濃度は1 ng/ml以下と低く、23%の検体で検出限界以下であった。血中濃度は皮疹面積が増えるに従い上昇した。また皮疹が改善するに従い血中濃度は下がった58)。Kruegerらは中等症から重症の小児および成人AD患者にタクロリムス(0.1%または0.03%)を外用した12の臨床試験から得られた血液データを用いて、タクロリムス血中濃度を解析した(成人で5821検体、小児で1488検体)。大部分(0.03%軟膏を外用した成人では95%、小児では99%、0.1%軟膏を外用した成人では85%、小児では93%)の検体で血中のタクロリムス濃度は1 ng/ml以下と低値を示した。タクロリムスの血中への移行は極めて低いことが明らかとなった59)。
Naylorらはタクロリムス軟膏(0.03%または0.1%)を外用した小児および成人AD患者9813名を最長4年(平均約200日)にわたって観察した結果、悪性黒色腫以外の皮膚癌(NMSC)の発生は13例(基底細胞癌10例、有棘細胞癌3例)であったと報告しているが、13例全例においてタクロリムス軟膏との関連性はないと判断されている。また、13例中12例が40歳以上であったが、40歳以上のタクロリムス軟膏外用群におけるNMSCの発生率は、一般集団と比較して有意差はなかった60)。MargolisらはTCIであるタクロリムスとピメクロリムス外用が、NMSC発生に及ぼす影響を調べるため、5000名の成人の皮膚炎患者を対象にアンケート調査を実施した。性別、年齢、NMSCの既往、ADの既往などを調整して、NMSC発生のTCI外用に対するオッズ比を計算したところ、0.54と1より低い値を示した。すなわち、NMSC発生群では対照群に比べてTCI外用率はむしろ低く、TCI外用はNMSC発生率の増加に寄与しないと考えられた61)。Arellanoらは293,253名のAD患者(小児は81名)のデータベースを基に解析を行い、性別、年齢、ADの重症度などを調整して、タクロリムス軟膏外用のリンパ腫発生に対するオッズ比を計算したところ、0.8とむしろ低い値を示した。すなわち、AD患者に対してタクロリムス軟膏外用を行っても、行わない場合に比べてリンパ腫の発生率は増加しないことを示した62)。
Parkらは中等症から重症のAD患者65名を対象に、0.03%タクロリムス軟膏を4週間外用しブドウ球菌感染への影響を検討した。外用1週後では、ブドウ球菌感染は外用前に比べて有意に減少した63)。HashizumeらはAD患者(16歳以上)388名を対象に後ろ向き研究を行い、タクロリムス外用前後で単純ヘルペス感染症の頻度を比較したところ、有意差を認めなかった64)。8) その他の文献
Freemanらは中等症から重症のADによる眼瞼炎の患者20名を対象に、8週間投与で0.1%タクロリムス外用の有用性を評価した。80%(16/20)の患者で皮疹は著明に改善し、副作用は外用当初の皮膚刺激感と痒みに限られていた65)。NiveniusらはADによる眼瞼炎の患者20名を対象に、3週間投与で、0.1%タクロリムスとクロベタゾン酪酸エステル(キンダーベート®)との比較試験(クロスオーバー)を行った。どちらも眼瞼炎の改善に有効であったが、0.1%タクロリムスの方が皮疹スコアの改善率が有意に高かった。眼内圧の上昇はともに認められなかった66)。
KawashimaらはAD患者106名と健常人708名を対象にQOL調査を実施した。QOLはAD患者で健常人に比べ有意に低下していた(3.1対3.5)。またステロイド忌避のAD患者35名を対象にタクロリムスを1年間外用し外用前後でQOLスコアを比較したところ、外用後に有意に改善した(2.9から3.3)67)。Kondoらは、小児AD患者30名を対象に、0.03%タクロリムスを4週間外用し、皮疹やQOLに与える影響を検討した。皮疹、痒み、QOLともに外用1週後より開始時に比べて有意に改善し、4週後まで効果は維持された68)。http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/05/04.htmlより引用
プロトピックの発がん性に関しては僕も使ってる薬なんで本気で真剣に調べました。その内容を記事にしたらこんな感じになります。
ただ長期連用による免疫抑制については分かっていないことも多くてステロイドじゃないから安全だ!とはとても手放しにはいえません。
発がん性うんぬんはおいておいても何年にも渡って毎日塗る薬ではないようなきもします。
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これ、素朴な疑問なのですが、血中濃度でだけでなく皮膚蓄積が問題な気がします。例えば、ステロイドをずーっと塗布してある日突然止めると一般的に言われる離脱と言う症状が出て一時的に劇的に悪化します。
プロトピックでも同様の事が起きるのでは無いでしょうか?
つまり血中濃度的にはマウスと比べて無視できる値であっても、皮膚表面では物凄い濃度で蓄積されている。っと。ただ実験しようにもマウスは皮膚を剥ぎ取れますが人間は難しいですからね。僕自身の実感では皮膚蓄積はステロイドと同程度にはあり、ステロイドと同程度には止めると離脱が起きる。医者それは無いと言いますが実際の所どうなんでしょうね?僕は一応プロトピックは一生塗り続ける類の薬では無いと言う立場なので長期使用した場合ちゃんと切る事ができるのか?凄い興味があるんですよ。長々ととりとめもない事書いてすいません。