ステロイドの副作用のリスクを減らすプロアクティブ療法ってどんな治療法なの?
2017/01/06
今日はプロアクティブ療法について書いていきたいなーって思ってます。プロアクティブ療法ってなんやねんって思う人もいるかもしれません。
TVなんかでよくアトピーの特集があるときに最新の治療法プロアクティブ療法!見たいな感じで放送されることがよくあります。
僕ら患者側としてはまぁ肩透かしというかなんというかステロイド週に○回使うだけじゃねーかというような何をいまさら感が強いです。
TVで見ただけあるいはネットでさらっと調べただけでこの治療法をすると結構やばいので注意書きも含めてやっていきたいと思います。
リアクティブ療法とプロアクティブ療法
http://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/gakkai_kirokushu/130216/pdf/seminar_koen02.pdfより引用
リアクティブ療法というのは多分殆どの患者さんがやってる塗り方だと思うんですが悪化したときのみステロイドやプロトピックを塗るというような感じです。
プロアクティブ療法というのはステロイドを1週間~1ヶ月集中して使い皮膚の炎症をゼロレベルまで抑えたあと週に2回ステロイドやプロトピックを続けるといった塗り方です。
プロアクティブ療法とリアクティブ療法の違いは分かったけどこれにどー言う意味があるの?というのは以下で説明します。
プロアクティブ療法を行なう意味
http://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/gakkai_kirokushu/130216/pdf/seminar_koen02.pdfより引用
最近分かってきたことなんですがリアクティブ療法つまり悪化してから塗るという手法では皮膚の表面上はよくなっても皮膚の下にある炎症を完全に抑えられないことが分かってきた。
これはどういうことかというとぱっとみ肌が綺麗になったようにみえても皮膚の下では炎症を起こす細胞がくすぶっていて塗るのを止めると再燃が早まるということ。
上の図のような感じ。特に炎症が慢性的に続いている患者さんほど皮膚の下の炎症が強く再燃が早い。
特にアトピーでリアクティブ療法をしている人の大半は医者の適切な指導がされていないのでステロイドの塗り方が不十分だったり綺麗な皮膚になるまで塗らない(痒みが取れただけでよしとする)。
というような背景があってステロイドをだらだらーっと使っちゃう人が多い。
そーいう使い方をしていると皮膚の表面の炎症のみならず皮膚の下の炎症も残ってしまいすぐぶり返すのでステロイドを連用するはめになってしまいステロイドの副作用がでやすくなってしまってあんまりよろしくない。
だったら最初に強いステロイドを集中的に使って表面の炎症を抑えた後週に2回外用を続けることで皮膚の下にくすぶっている炎症を完全に抑えてあげたほうがいい結果が出ることが多いよーというのがプロアクティブ療法です。
炎症がぶり返すたびにステロイドをだらだら連用するよりは週2回きっちり塗ったほうがステロイドの副作用のリスクも少なくてすみます。
リアクティブ療法でアトピーの炎症のコントロールが上手くいっている人(僕とかはそのタイプ)はそのままでいいし試してみてもいい。
リアクティブ療法で上手くいかない場合、特にある程度症状が重くステロイドを適切に使えていない患者さん(医者の指導不足)はプロアクティブ療法を試すといい結果を得られることもあるよーって事を頭に入れておくといいと思います。
どちらを選ぶかは患者さんの自由です。
プロアクティブ療法の論文
http://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/gakkai_kirokushu/130216/pdf/seminar_koen02.pdfより引用
まぁまぁこんな感じです。以下分かりやすい解説。
試験開始時のグラフはステロイドを外用する前の素の状態(中等症のアトピー=ぱっとみアトピーでわかる人と考えてもらえれば)。
0週の時点のグラフは1ヶ月間毎日アンテベート(非常に強いステロイド)の外用を平均1.6回行い炎症が抑えた状態。上で説明した寛解導入期ね。
その後毎日の外用を止めて週に2回のアンテベート+毎日の保湿剤の外用に変更。アンテベートを週2回外用した郡(オレンジのグラフ)+保湿剤(毎日)と保湿剤(毎日)のみ外用した郡(青色のグラフ)の経過を比べたもの。
保湿剤のみ外用した郡(青色のグラフ)は4週間後に再燃が見られたのに対してアンテベートを外用した郡(オレンジのグラフ)+保湿剤は炎症が改善されていくのが分かる。
つまりステロイドを塗って皮膚の炎症が抑えられた(寛解導入期)後週2回ステロイドと保湿剤を併用すると保湿剤を塗るよりいい結果が出るよということです。
ここにはのっけてませんがプロアクティブ療法とリアクティブ療法を比較した論文もあってそちらもプロアクティブ療法のほうがいい結果が出ています。
ちなみに原文はこちら。
自施設を含む3施設にてProactive療法の有効性について検討を行った。
ステロイド外用薬(アンテベート®軟膏)の1日平均1.6±0.1回の塗布を平均27.8±1.7日行うことによって寛解に至った中等度以上のAD患者23例を、Proactive療法群アンテベート®軟膏を週2日、保湿剤(ヘパリン類似物質製剤〕
またはワセリン)を毎日、各1日2回塗布〕と保湿剤群(保湿剤を毎日、1日2回塗布)に分けて比較した。なお、試験対象の患者背。景については両群間に有意な差を認めなかった。
重症度スコアおよび罹病範囲スコアを図3に示す。保湿剤群では4週後以降、重症度スコア、罹病範囲スコアともに上昇し、再燃が認められた。一方Proactive療法群では、8週後まで重症度スコアおよび罹病範囲スコアは寛解時(0週)の改善効果を維持していた。
さらに、重症度スコア(4週後)において両群間に有意な差が認められた(P<0.05、Studentʼs。t-test)
同様に、痒みの評価としてのVAS(Visual Analogue Scale)スコアにおいても、Proactive療法群では試験開始時と比較して有意な改善(P<0.01、Paired t-test)が維持されるのに対して、保湿剤群では4週後以降、痒みのスコアが上昇した。
またProactive療法群の寛解期間は、保湿剤群に比べて有意に長く(P<0.01、Studentʼs t-test)、寛解維持率も保湿剤群に比べて有意に高く(P<0.01、Logrank test)、これまでの報告と同様にProactive療法の優位性を示す結果となった。
なお、副作用の発現は、萎縮および血管拡張が両群に1例、ずつ認められたが、治療を中断した症例はなかった。しかし、これらは8週間の試験期間での結果であることから、今後さらなる検討が必要と考えられる。
http://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/gakkai_kirokushu/130216/pdf/seminar_koen02.pdfより引用
プロアクティブ療法の注意点や問題点
やるにあたって以下の事を守らなきゃいけません。TVなんかではプロアクティブ療法は誰にでも効くとなっていますが誤解を招きやすいです。
上手くいくとこんな感じのグラフの経過をたどるみたい。
http://www.torii.co.jp/hifu/gakujutsu/gakkai_kirokushu/130216/pdf/seminar_koen02.pdfより引用
ステロイドを毎日外用しても皮膚の状態が良くならない患者さんにはできない
プロアクティブ療法というのは一定期間集中してステロイドを外用した後皮膚の表面の炎症を抑える(寛解導入期)という前提がありその後週2回外用することでいい結果が出るということ。
前段階の集中的に外用して炎症を抑えるということが出来ない患者はプロアクティブ療法が出来ません。
具体的に言うとステロイドが効かない患者あるいは塗っても翌日にはすぐにぶり返すという患者にはできません。
論文の報告によれば成人のアトピー患者の10~20%程度はドロップアウトしているようです(全員が効かない、あるいはすぐぶり返すというだけではなく患者さんが拒否あるいは副作用で続けられなくなった報告を含む)
週2回の外用を守る
週2回塗ることに意味があります。炎症が軽いときにもステロイドを積極的に塗るということではないです。
TVなんかでは説明が凄い大雑把なので勘違いしてステロイドの予防塗りというか「炎症が軽いときでもステロイドやプロトピックで炎症を抑えたこんだほうがいいんだ」というように考える人が出てくると思います。
そういうことじゃなくて炎症が軽いときは保湿剤だけじゃなくて週に2回ステロイドやプロトピックを使ってあげるといい結果が出るし炎症が軽い場合はその程度の外用で充分いい結果が得られるよーという事です。
一生薬を塗り続けるハメになる
アトピーは自然寛解が期待できる病気ですが週に2回塗り続けるということは一生薬を塗り続けるハメになるということです。
僕はその程度の労力でアトピーがいい状態を維持できるのであればそれに越したことはないと思うし週に2回なら免疫抑制剤であるプロトピックやステロイドの副作用のリスクも問題にならないしいいんじゃないかなぁと考えています。
中には薬を塗り続けるのは死んでも嫌だ!という人もいるでしょうし難しいところです。
一応開始1年間はプロアクティブ療法のほうがリアクティブ療法よりも優れているという結果が出ている(それ以降は論文のデータがないので分からない)
1年間はプロアクティブ療法をやってみてそれ以降は患者さん自身にゆだねるというのがいいんじゃないかなぁとおもいます。
僕はステロイド治療開始時に半年間プロアクティブ療法をやってリアクティブ療法に挑戦→上手くいかず。
その後1年半プロアクティブ療法を続けた後リアクティブ療法に挑戦→ステロイドを塗らずに1~2週間はいい状態が維持できるのでそれ以降はリアクティブ療法というようなかんじでやってます。
元々ズボラな性格もあって週に2回塗るのはめんどくさいし悪化したときのみ塗るというほうが僕にあっていたみたいです。
ステロイドを塗る量が多くなる
プロアクティブ療法のほうがステロイドを塗る量が多くなります。
でも僕はそんなに問題には思ってなくてむしろ多く塗ることにより結果的に連用期間が少なくなり副作用のリスクは減るはずです。
プロアクティブ療法は週に2回塗るということで週に5日は休薬期間が必ず取れますがリアクティブ療法は悪化するたびに塗るということになるので休薬期間が作りにくいです。
ステロイドを使うと必ず皮膚の萎縮(皮膚のバリア機能低下)が起きるのでそれを回復させる為にも休薬期間は必須です。
もちろん炎症が重い初期はそれらのリスクを背負ってでも皮膚の炎症をゼロまで持っていったほうがいいです。あくまで軽くなってからの使用法という事です。
アトピーの炎症というのはドミノ倒し方式でどんどん大きくなっていくので炎症が重いと中々ステロイド塗っても収まりません。炎症が軽いときに抑えるプロアクティブ療法だとステロイドを塗ると1日で治ります。
一方リアクティブ療法だと悪化してからステロイドを塗るので連用期間が長くなり休薬期間があまり取れないことが多いです。
僕なんてステロイド7日塗って炎症を抑えたと思っても3~4日後にはぶりかえすというのはしょっちゅうやってましたからね。
今は皮膚の炎症が少なくなって悪化しても3日塗れば1~2週間は持ちます。ある程度症状が重い場合、特に治療の初期はプロアクティブ療法のほうが向いてます。
プロアクティブ療法のやり方
病院に電話してプロアクティブ療法をやってるかどうか聞くのがいいと思います。TARCというアトピーの症状を正確に計る血液検査がないと多分やってないと思う。
まず集中的に1週間~1ヶ月間の間でステロイドを外用し(1日1回あるいは2回)軽症まで皮膚の状態を持っていく。当然ながら炎症が抑えられない場合は出来ない。
このときにTARC検査でアトピーの症状を計って軽症の値になったら毎日の外用を止めて週に2回の外用を開始する。使う薬は非常に強いもしくは強いステロイドorプロトピックを選ぶ。
中には週3回とか週1回とかでやってるところも多い。TARC検査を見つつ自分で勝手にすることもできますがぶっちゃけ一人でやらんほうがいいと思う。
TARCってなんぞって人はこちらをどうぞ。
アトピーの症状が血液検査するだけで一発で分かるTARCって知ってます?
僕なんか慣れてるから自分ひとりでも出来るけど初めてするときは常に不安が付きまとうのでこういうときは医者に頼ってなんぼだと思う。
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こんばんは。
いつもここで勉強しています。
私の通っている皮膚科では強い炎症の時(グジュグジュではないが赤みとその部分に熱があり、少し硬くなる)はリンデロンVGと保湿を混ぜた物で4~5日抑えます。
そのあとにベシカムに切り替え、毎日の保湿とベシカムだけになります。
それでも3〜4日後には赤みが出てきてこの赤みを放置するとブツブツが出てきます。
赤みが出た段階で怖がらずリンデロンVGと保湿を混ぜた物を塗ればいいのでしょうか?
週二回というのは、週に2日ではなく、例えば火曜日の夜と金曜日の夜の週二回という感じでしょうか?
やはりどうしてもプロトピックを使うのに抵抗があり、ステロイドを減らして行くようにしたいです…。
でも私の顔には酒さもあるみたいなのでステロイドのプロアクティブ法は難しいんですかね…
リンデロンというのも自分の中で引っかかりますが、先生は弱いステロイドだとダラダラなるだけと言います。
週2回というのはその認識で合っています。赤みが出た時点で炎症なので赤くなる前に抑えるのがベストですね。
Soboさん
記事ありがとうございました。大変参考になりました。
さて、ステロイドを使う時は、皮膚を薄くしないために休薬期間をとることをすごく意識しているのですが、その際いつも迷うのが、「この皮膚の色は色素沈着なのか、炎症なのか」という判断です。
「ステロイドの塗りが甘いと、すぐ炎症がぶり返すので、炎症があるうちはステロイドをしっかり使う」と思い使用しているのですが、そうは言っても「塗りすぎると皮膚が薄くなるのでステは最短期間しか使いたくない」という思いがあります。
で、幸いステが効いてきた場合、休薬期間をとるためステをやめようと思うのですが、アトピー患者の場合、客観的に見たらまだ炎症があると思われる肌でも、それまでの皮膚が悲惨な状態だと、つい
「あ、もうこれくらいで炎症おさまったかも」と思いがちなんですよね。
そこで質問です。
Soboさんは、リアクティブ療法で「炎症が治まって、ステの休薬期間を置く」場合、どのような基準で判断されていますか?TARCなど病院で行う検査ではなく、自分が日常生活でコントロールする際の基準判断ということです。
手触りなのか、赤みなのか、かゆみなのか、その他皮膚の状態から読み取れる基準があれば、ぜひ教えて頂きたい、と思います。
また、色素沈着と炎症の違いはどのような基準で判断されていますか?
宜しくお願い致します。
コメント承認だけして寝ぼけて返信忘れてました。
僕の皮膚の判断基準はこんなかんじです。正常な皮膚>毛穴の開き&鳥肌>粉吹き>カサカサ>赤み>ガサガサ>ゴワゴワ>汁
自分の状態をこの中からざっと判断して保湿かステロイドをつかい分けます。
一番分かりやすいのはお風呂上りに保湿を塗って触ってみてガサガサしていたらステロイドを塗るですかね。
それと寝るときに痒くて眠れない。もしくはひっかいている。普通に生活するうえで無意識にぼりぼりかいているときも大抵炎症が出ているので全身にステロイドを塗って一旦炎症をリセットします。
リセットした状態だと全然痒くないのでこの状態を保つように維持するというのが分かりやすいかなと思います。
人によってステを塗る基準と言うのは全然違うので基本だけ抑えたら自分なりの感覚を信じるようにしたほうがいいです。