10年前の標準治療と2015年の標準治療では月とスッポンレベルで違う
2017/01/06
アトピー治療って10年前と今とじゃ全然違うんですよね。これ知ってるのと知らないのは全然違うんで是非さらっとでもいいので目を通して欲しい。
ネットは特に脱ステ系のブログが多くて標準治療の進歩について触れられていないように思えたのでちょっと触れておこうかと思います。
どれだけ治療のツールが進化しても結局使う側の知識がないとあまり意味がないので是非知識をつけて上手く使いましょう。
10年前の治療は治療するツールが足りなかった
2005年当時の治療というのはざっくりいうとものすごく適当です。こんなんで本当に良質な対症療法ができるのか?と疑うレベル。
以下どれぐらい適当だったかというのを2005年と2015年の現在の違いを見ていきます。
ステロイドの使い方が適当
まだ2005年の時点では1FTU(ワンフィンガーチップユニット)という薬の塗り方、指導がなかったもしくはあまり広まってなかったという時期。
医者によっては薄く塗ったりあるいは刷り込むように行ったりステロイドの強さもばらばら。
病院の数だけ塗り方があったような時期です。塗り方の指導がないのが普通であればまだまし。超優良な病院にあたった!と喜ぶような時代でした。今はある程度塗り方が決まっているので多少まし。
だからステロイドや保湿剤の塗り方が不十分で相当数の患者がステロイド保湿剤の量が足りないせいでコントロール不足に陥る人が多かったんじゃないかと思います。
このFTUに関しては僕は糞だと思ってるんすがそれでもないよりはよっぽどましだと思います。特に「薬に関してはきっちりと必要量塗らないと効果がない」と患者の間に広めた功績は大きい。
最も塗り方に関しては1FTUに従っているとステロイドの量が不足する。いまだに医者がそもそも指導をしない怠慢、間違った塗り方の指導があるのでまだまだ発展途上ですが。
アトピー患者の半数がステロイドをうまく使えていない!ステロイドの使い方を要チェック!
薬の塗り方の基本1FTU(ワンフィンガーチップユニット)を知っていますか?
保湿剤の使い方も適当
1FTUの概念が当時はないしアトピーが皮膚バリアの障害によるものというものという考えが広まったのはフィラグリンによる遺伝子異常がわかった後。
フィラグリンというのは保湿成分の一つでこれが不足すると皮膚がガサガサになっちゃうって事。
その保湿成分がアトピーの人の一部には遺伝的に不足している。だからこそ外部から保湿剤で補うことが大事っていうのがわかってきた。
最近ニュースで赤ちゃんに保湿剤を塗るとアトピーの発症リスクが3割リスク減となっているように論文でもどんどん証明されています。
アトピーが皮膚バリア障害によるものと分かるまでは保湿剤の使い方も適当だったように思う。
今はどこの病院にいっても朝と夜2回塗ってください。といわれるが当事はお風呂上りに1回塗ってくださいだとか乾燥するたびに塗ってくださいだとか保湿剤の指導もバラバラだった。
中には保湿剤なんていらんからステロイドだけ塗っとけというような病院もありました。
保湿剤は治療の一環という側面もあったがそれほど重要視されていたわけではなく患者さんの苦痛を和らげるというような意味合いも強かったのではないかと思う。
今は保湿剤を炎症のないときにきっちり塗ってあげると再燃までの期間が延びることや使い方の違いで効果が全然違うことが分かってます。
例えば一日1回だけ塗る場合と2回塗る場合ではこれだけ効果が違うのがわかってたりとかね。
医者から保湿剤のぬり方は教えてもらった?正しい保湿剤の使い方を要チェック!
TARCの有無
TARCという血液検査が2007年か2008年ぐらいに保険適用されました。すげぇざっくりいうと今のアトピーの症状が一発でより正確に客観的に分かる血液検査です。
今までアトピーが正確に分かる客観的な指標というのがなかったのでこれの登場が2000年代では一番大きいんじゃないかと。
自分のアトピーの数値がわかるとそれを目標に治療の計画を立てることが出来るし患者さんもモチベーションが上がる。
医者側から診ればステロイドをいつ塗るのかいつ止めるのかというのが数値で説明できるので患者さんに説明しやすいですし納得もしやすいです。
例えば皮膚が綺麗になってもTARC値が高ければそれは炎症が続いているのだからステロイドを塗らなきゃいけないとかね。
アトピーの症状が血液検査するだけで一発で分かるTARCって知ってます?
プロアクティブ療法の登場
今まで悪化したらステロイドを塗りよくなったら止めるというような塗り方。いわゆる「リアクティブ療法」といわれる塗り方が主流だった。
しかしこの塗り方ではある程度症状の重い患者さんだとステロイドを止めた瞬間に炎症をぶり返すことが分かってきた。
その原因がなぜかというのが最近になってようやくなんだけど分かってきて一見皮膚が綺麗になったように見えても皮膚の様々な細胞を見ると小さな炎症が起きている。
その段階で保湿剤のみに切り替えても炎症は再燃しやすいので中々上手くいかない。リアクティブ療法では半分程度の人が1ヶ月以内に再燃してしまうようだ。
そこでよくなった後も週に2回外用を続けることでその小さな炎症を抑えてやればどうだろうか?というのが「プロアクティブ療法」です。
この治療法は良くなった後週2回に切り替えるタイミングというのが凄い難しいというのが難点だった。やめるのが早すぎればすぐに炎症が再燃してしまうし遅すぎればステロイドの副作用が起こるリスクが高まる。
これがTARCの登場で一気に敷居が下がった。TARC値が下がりきったところで週2回に切り替えるという指標が出来たおかげで今現在徐々に広まっている最中です。
どれぐらい凄いかというとこの治療法はリアクティブ療法に比べてステロイドを止めてから再燃するまでの平均期間が10倍になる塗り方です!塗り方かえるだけなのにすごいでしょ?
これは1年間リアクティブ療法とプロアクティブ療法を比べたものです。このように長期的に見ればはっきりと有意差がでてます。
僕はこの塗り方が全国に広まればいいと思うんですがこのやりかたには医者と患者双方に知識が必要。特に患者さんの理解が大事。ズボラだと絶対に続かないしね。
TARCがないと不可能ではないが精度が下がるということでいまだにリアクティブ療法が主流な感じはあります。
プロアクティブ療法は一部の大きな病院でしかやってない感じです。小さな病院ではTARCがない。患者に説明する時間がない。という点がハードルが高いのかな?
あ、この記事を見てプロアクティブ療法なんて塗り方があるんだといって自己流で始めると殆どの人が失敗するのでやめてくださいね。やるなら医者のサポート必須です。
ステロイドの副作用のリスクを減らすプロアクティブ療法ってどんな治療法なの?
10年でこれだけ標準治療は変わってるんだけど患者の人は殆ど知らないと思うんですよね。他にも抗ヒスタミン剤の使い方が変わってたりプロトピックの使い方だったり色んな部分が変わってます。
唯一変わらないのは医療がどれだけ進歩してもこれらを使う側の医者のスキルは変わらないって事。
あいつらいまだに5分診療だし薬の塗り方も説明しないしこれだけツールが進化してるのにいまだに上手く使いこなせていない。
だったらもう患者が勉強するしかないでしょ!主治医に依存する患者は危険です。「信頼」はいいですが「依存」は違います。
主治医に依存する患者さんがいまだに多く見られます。アトピーって医者には治せないものだと僕は思っています。
医者がするのはあくまで手助け。治すのはいつでも自分です。常に考えて治療する賢い患者であれ。
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Comment
最後の文章にまったく同意します。
というのも、これはアトピーに限らないことだと思うからです。
基本的に権威を持って「信ぜよ」と言うのも(ベタな利己主義)言わざるをえないのも(私は皮膚科医であるがゆえに専門外には一切手をつけない。それが誠実であるなどと言う言説)すべては結局のところ、民衆の無知に尽きるからです。
3.11以降は減ったとはいえ、それでもやはり「安心・安全」などという言葉に甘える人たちが多すぎます。
そもそも科学は反証性が無ければ成り立たないシロモノ(リスクが無ければそれは科学とは言えない)なので、当然社会にとって科学が主柱になれば扱う側の勉強も求められるわけです。
アトピー一つを取って考えてみても、あらゆる問題の根底に一体どういう問題が流れているのか。
目に見えてわかる事柄の一つだと考えています。
良い記事を本当にありがとうございます。